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島根県益田市の法律事務所。田上法律事務所です。

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身よりのない被後見人の葬儀・埋葬。


 相談の概要

 社会福祉協議会で法人後見の実務を担当しています。
 市長申立てで社会福祉協議会が法人として後見人に就任した事件の被後見人のおじいちゃんの体調が最近急激に悪化し,お医者様から余命幾ばくもないと言われています。社会福祉協議会が後見人に選任された直後に行った調査で,相続人はないことが判明しており,入所施設の担当者の話でも,おじいちゃんに面会はなかったそうです。おじいちゃんが亡くなられた場合,葬儀を出してくれそうな方は思い当たらないのですが,どうすればよいでしょうか。  

 ご回答
 
 現時点で,すぐ市町村の後見申立ての担当者に相談して下さい。
 老人福祉法はその11条2項で,「市町村は,前項の規定により養護老人ホーム若しくは特別養護老人ホームに入所させ,若しくは入所を委託し,又はその養護を養護受託者に委託した者が死亡した場合において,その葬祭(葬祭のために必要な処理を含む。以下同じ。)を行う者がないときは,その葬祭を行い,又はその者を入所させ,若しくは養護していた養護老人ホーム,特別養護老人ホーム若しくは養護受託者にその葬祭を行うことを委託する措置を採ることができる。」と規定しています。老人福祉法11条1項はいわゆる措置入所に関する規定ですから,このおじいちゃんが老人福祉法11条1項に該当してこの施設に入所していた場合には,老人福祉法11条2項で葬儀,火葬,埋葬ができることになります。
 仮に老人福祉法11条2項の適用がない場合でも,墓地,埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)9条によって,おじいちゃんが亡くなられた後の埋葬と火葬は死亡地の市町村長の義務となりますので,やはり市役所の担当者に相談することになります。
 なお,墓地埋葬法は老人福祉法と異なり,「葬祭」についての規定がないのですが,@墓地埋葬法が埋葬及び火葬の費用について行旅病人及び行旅死亡人取扱法の規定を準用するとしていること(墓地埋葬法9条2項),A行旅病人及び行旅死亡人取扱法13条1項において火葬・埋葬をした市町村はその費用を他の公共団体に弁償請求できるとしていること,B島根県では市町村が設けている行旅病人及び行旅死亡人取扱規則,島根県「行旅病人,行旅死亡人及び同伴者の救護並びに取扱いに関する規則」において,市町村は島根県に対して弁償請求できるとされていること,C島根県「行旅病人,行旅死亡人及び同伴者の救護並びに取扱いに関する規則」では,「読経料」の弁償請求を認めていることから,市町村が最低限の葬儀費用を支出することも法律上容認されると判断すべきであり,また,実際そのように運用されているようです。
 したがって,老人福祉法11条2項の適用がない場合には,市町村長において葬儀,火葬,埋葬を行うことになると考えられます。
弁護士 田上尚志(平成24年11月10日,平成26年04月01日,平成28年06月21日加筆修正) 

 参考文献


 浜田市行旅病人及び行旅死亡人取扱規則(平成17年10月1日 規則77号)
 島根県「行旅病人,行旅死亡人及び同伴者の救護並びに取扱いに関する規則」(昭和33年6月6日島根県規則第37号)

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