相談の概要 町役場で高齢者福祉担当をしています。 私が勤務している町は高齢化が進んでおり,また,過疎地なので,高齢者夫婦だけの世帯,高齢者の独居世帯が少なくありません。その中には,夫婦とも認知症であるとか,認知症がかなり進んでいる独居の方もあり,そのような場合には施設入所をお勧めするのですが,自宅に強い愛着があり,どうしても施設入所に同意されない方もおられます。実際,私が訪問しているおじいちゃんで,どう見ても認知症が相当進んでおり,入所した方がよいと思われるのに,自分が建てた家だということで強い愛着があり,自宅で暮らすのだと言い張って入所に同意されない方がいらっしゃいます。近所の人のお話では,子供のころに親族の方がほとんど亡くなり,結婚もされずに苦労して働いて土地を買い,家を建てたということです。 入所に同意いただけない場合には施設入所というわけにはいかないのですが,もしこのような方が入所しないまま突然ご自宅で亡くなられてしまった場合,死亡の届出はどうしたらよいのでしょうか。親族がなかったり,親族と連絡が全くつかない方もおられますので,心配しています。 |
ご回答 もしこの方が自宅で亡くなられてしまい,死亡届の届出義務者がない場合には,届出義務者以外の者から死亡届を提出する必要なく,警察署長から死亡地の市町村長に対して死亡の報告がなされることになります。 もしこの方が自宅で亡くなられてしまった場合には,第1発見者は最寄りの警察署に通報することになるでしょう。通常の感覚として死体を発見したら警察に届け出ることになるでしょうし,この点については「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」という法律があり,その第4条第1項に「警察官は,その職務に関して,死体を発見し,又は発見した旨の通報を受けた場合には,速やかに当該死体を取り扱うことが適当と認められる警察署の警察署長にその旨を報告しなければならない。」と規定されていますので,法律も第1発見者が死体を発見したことを警察官に通報することを予定しているわけです。 警察官が死体発見の通報を受けた場合,その旨を警察署長に報告しなければならず(「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」第4条第1項),警察署長はその死体の死因及び身元を明らかにするため必要な調査をしなければならないと規定されており(「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」第4条第2項),この規定に従って調査がなされますが,そうすると,戸籍法87条本文(水難,火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には,その取調をした官庁又は公署は,死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。)により,公署すなわち公共団体の機関たる警察署長が死亡地の市町村長に当該死体について死亡の報告をすることになります。 なお,この報告は報告書をもってなされ,報告書の記載事項については死亡届出書の記載事項が準用されます(戸籍法91条,同86条2項)。 |
弁護士 田上尚志(平成25年10月17日) |
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