相談の概要 先日,息子が万引きをしたということでつかまりました。息子には盗癖があり,これまで何回か警察につかまって裁判になったことがあり,私も何回か情状証人と言うことで裁判所で証言したことがあります。 ところが,先日息子の国選弁護人になった弁護士から連絡があり,窃盗ではなく常習累犯窃盗ということで逮捕・勾留されているとのことでした。常習累犯窃盗とはどのような犯罪なのでしょうか。また,息子は刑事裁判で執行猶予になる可能性はあるのでしょうか。 |
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ご回答 常習累犯窃盗は,刑法ではなく,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律(いわゆる盗犯等防止法)第3条に規定されている犯罪です。盗犯等防止法第3条に,「常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル」と規定されています。ここで,その前条である盗犯等防止法第2条が掲げる刑法各条の罪は,刑法第235条(窃盗罪),刑法第236条(強盗罪,強盗利得罪),刑法第238条(事後強盗罪),刑法第239条(昏睡強盗罪)またはこれらの未遂罪ですので,@反復してこれらの罪を犯す習癖を有する者が(常習性),Aその犯罪行為の前の10年内にこれらの罪又はこれらの罪と他の罪との併合罪に付き3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受けたか,又はその執行の免除を得ていた場合(累犯性,刑法56条,同59条)に成立します。盗犯等防止法第2条の法定刑は窃盗については3年以上,強盗については7年以上の有期懲役ですので,常習累犯窃盗の場合は3年以上の有期懲役ということになります。 常習累犯窃盗の場合に執行猶予がつく可能性が全くないというわけではありません。 執行猶予は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときにしか付けることができません(刑法25条)。常習累犯窃盗の場合には未遂減刑はないのですが,酌量減軽(刑法66条,同67条)をすることは不可能ではなく,酌量減軽があった場合には短期が1年6月以上の有期懲役となりますので,常習累犯窃盗の場合でも3年以下の有期懲役刑が言い渡される可能性があります。そして,被告人が過去に懲役6月以上の刑を言い渡されていたことがあったとしても,判決言渡日の時点で前刑の執行を終わった日又は前刑の執行の免除を得た日から5年を超える期間経過していれば,刑法第25条1項2号により執行猶予を付すことができることになります。 息子さんの場合には万引きということなので,被害品が1個だけで被害弁償がなされており,息子さんの反省の情が極めて顕著で,かつ,直前の刑の執行終了の日ないし執行の免除を得た日から今回の裁判の判決の言渡日において5年を超える期間経過していていれば,判決において執行猶予が付される可能性はあります。 |
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弁護士 田上尚志(平成26年09月23日) | ||
参考文献・HP 安西温「特別刑法7」(警察時報社) |
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