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認知症高齢者の日常生活自立度。


 相談の概要

 大学の総合政策学部で勉強しています。
 先日,社会見学で成年後見センターの会議を見学しましたが,「日常生活自立度はUa」という言葉を耳にしました。日常生活自立度とはどういう意味なのでしょうか。     

 ご回答
 
 「日常生活自立度」は,正確には「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」といい,「障害高齢者の日常生活自立度」とともに,介護保険法における要介護認定,要支援認定(介護保険法27条〜39条)において,重要な指標となるものです。平成5年に制定されたものですが(平成5年10月26日老健135号厚生省老人保健福祉局長通知),制定当時は「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」という名称でした。
 しかし,「『痴呆』に替わる用語に関する検討会」(座長:高久史麿(日本自治医科大学長・日本医学会長)において,一般的な用語や行政用語としての「痴呆」について,「「痴呆」という用語は,侮蔑的な表現である上に,「痴呆」の実態を正確に表しておらず,早期発見・早期診断等の取り組みの支障となっていることから,できるだけ速やかに変更すべきである。」,「 新たな用語としては,「認知症」が最も適当である。」等を内容とする報告書がとりまとめられ,厚生労働省は,この報告書を受けて,平成16年12月24日付「報告書を踏まえた厚生労働省における対応」という文書を出し,同日以降,「痴呆」に代えて「認知症」という文言が使用されることになりました。そこで,「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」も,その中に含まれる「痴呆」という文言を「認知症」に置き換えることになりました。
 この,「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」は,具体的には,下表のとおりとなっています。
 ランク 判断基準  見られる症状・行動の例   判断にあたっての留意事項及び 提供されるサービスの例
 何らかの認知症を有するが,日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。     在宅生活が基本であり,一人暮しも可能である。相談,指導等を実施することにより,症状の改善や進行の阻止を図る。
 具体的なサービスの例としては,家族等への指導を含む訪問指導や健康相談がある。また,本人の友人づくり,生きがいづくり等心身の活動の機会づくりにも留意する。 
   日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても,誰かが注意していれば自立できる。     在宅生活が基本であるが,一人暮らしは困難な場合もあるので,訪問指導を実施したり,日中の在宅サービスを利用することにより,在宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。
 具体的なサービスの例としては,訪問指導による療養方法等の指導,訪問りハビリテーション,デイケア等を利用したリハビリテーション,毎日通所型をはじめとしたデイサービスや日常生活支援のためのホームヘルプサービス等がある。   
Ua
 
 家庭外で上記Uの状態が見られる。   たびたび道に迷うとか,買い物や事務,金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等 
Ub
 家庭内でも上記Uの状態が見られる。   服薬管理ができない,電話の対応や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等 
V       日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ,介護を必要とする。   着替え,食事,排便・排尿が上手にできない・時間がかかる,やたらに物を口に入れる,物を拾い集める,徘徊,失禁,大声・奇声を上げる,火の不始末,不潔行為,性的異常行為等  日常生活に支障を果たすような行動や意思疎通の困難さがランクUより重度となり,介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどのくらいの頻度を指すかについては,症状・行動の種類等により異なるので一慨には決められないが,一時も目を離せない状態ではない。在宅生活か基本であるが,一人暮らしは困難であるので,訪問指導や,夜間の利用も含めた在宅サービスを利用しこれらのサービスを組み合わせることによる在宅での対応を図る。具体的なサービスの例としては,訪問措指導,訪問看護,訪問リハビリテーション,ホームヘルプサービス,デイケア・デイサービス,症状・行動が出現する時間帯を考慮したナイトケア等を含むショートステイ等の在宅サービスがあり,これらを組み合わせて利用する。   
Va
 
 日中を中心として上記Vの状態が見られる。   着替え,食事,排便・排尿が上手にできない・時間がかかる,やたらに物を口に入れる,物を拾い集める,徘徊,失禁,大声・奇声を上げる,火の不始末,不潔行為,性的異常行為等 
Vb
 
 夜間を中心として上記Vの状態が見られる。   ランクVaに同じ 
W  日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ,常に介護を必要とする。   ランクVに同じ   常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランクVと同じであるが,頻度の違いにより区分される。
 家族の介護力等の在宅基盤の強弱により在宅サービスを利用しながら在宅生活を続けるか,または特別養護老人ホーム・老人保健施設等の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場合には,施設の特徴を踏まえた選択を行う。 
 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ,専門医療を必要とする。  せん妄,妄想,興奮,自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等   ランクT〜Wと判定されていた高齢者が,精神病院や痴呆専門棟を有する老人保催施設等での治療が必要となったり,重篤な身体疾患が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。専門医療機関を受診するよう勧める必要がある。 
弁護士 田上尚志(平成24年11月13日) 

 参考文献・HP


 報告書を踏まえた厚生労働省における対応(平成16年12月24日)
 「要介護認定における『認定調査票記入の手引き』,『主治医意見書記入の手引き』及び『特定疾病にかかる判断基準について」の一部改正について(平成18年1月19日付老老発第0199001号)

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