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民事再生と奨学金。


 相談の概要

 民事再生手続を申し立てたのですが,大学進学の際に利用した奨学金だけは支払いたいと思い,申立てをお願いした弁護士にも内緒にし,債権者一覧表にもあえて記載しませんでした。
 ところが,民事再生手続の再生計画で決まった支払いが終了したところで,奨学金を即刻全額支払えという裁判を起こされてしまいました。どうすればよいでしょうか。         

 ご回答

 その奨学金の支払い義務も民事再生手続によって減縮されますので,全額支払いの必要はありません。今回の裁判では民事再生手続の開始と終了について証拠提出し,債務の減額を主張すべきです。

 民事再生法181条1項は,「再生計画認可の決定が確定したときは,次に掲げる再生債権(約定劣後再生債権の届出がない場合における約定劣後再生債権を除く。)は,第156条の一般的基準に従い,変更される。」と規定し,同3号は,「第101第3項に規定する場合において,再生債務者が同項の規定による記載をしなかった再生債権」と規定しています。また,民事再生法101条3項は,「再生債務者等は,届出がされていない再生債権があることを知っている場合には,当該再生債権について,自認する内容その他最高裁判所規則で定める事項を第1項の認否書に記載しなければならない。」と規定しています。なお,民事再生法101条1項の規定の内容は,「再生債務者等は,債権届出期間内に届出があった再生債権について,その内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成しなければならない。」となっています。
 したがって,秘密にしていた奨学金返還義務も,民事再生法181条1項によって民事再生手続によって減縮された他の債権と同じ条件まで減縮されることになります。

 民事再生手続においては,再生債権者は,原則として再生手続開始と同時に定められる債権届出期間内に裁判所に対して再生債権の届出をしなければなりません。この期間内に債権届がなされず,あるいは再生債務者等(管財人が選任されていない場合にあっては再生債務者,管財人が選任されている場合にあっては管財人。民事再生法2条2号)が自認しなかった再生債権は,原則として再生計画認可決定が確定した時点で失権し,再生債務者は免責される結果(民事再生法178条),再生計画の履行により弁済を受けることができなくなります。
 しかし,この原則を貫くと,再生債権者にとって酷な結果を招くこともあるため,民事再生法181条1項において例外として免責されない場合が規定されているのです。なお,民事再生法181条1項第3号によって免責されない債権は,民事再生法181条2項が「前項第3号の規定により変更された後の権利については,再生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に,再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時)までの間は,弁済をし,弁済を受け,その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。 」と規定していることから,他の再生債権者に対して劣後的に取り扱われることになります。    
弁護士 田上尚志(平成25年01月12日) 

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