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大雨による崖崩れとその後の処理


 相談の概要

 私は,自分の所有する一筆の土地の一部に家を建て,庭にテニスコートを作って毎日テニスを楽しんできました。
 ところが,この土地は崖下にあるのですが,先日この地方に観測史上初めてという1時間に110ミリという大雨が降り,隣地の崖が崩れ,幸い,家は無事だったのですが,テニスコートに土砂が崩れ出し,コートの一部が破壊されてしまいました。また,コートの半分が土砂に埋まった状態です。崖は,それまでは木が生えていたりしていたのですが,土砂崩れで赤土が剥き出しになっており,このまま放置すれば次の土砂崩れで家も埋まってしまうかも知れません。崖の持主にテニスコートの修理費用と土砂の撤去,今後の崖崩れの防止工事を求めたいのですが,どうすればよいでしょうか。       

 ご回答
 
 テニスコートの修理費用の請求は難しいと思います。
 しかし,土砂の撤去は請求できると思います。
 また,崖崩れの防止工事については,共同の費用で行うべきことになるでしょう。

 テニスコートの損害の賠償は,あなたと隣地所有者との間に契約関係がない以上,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が成立するかが問題となりますが,観測史上初めてという1時間に110ミリという大雨が降ったことが崖崩れの原因であれば,通常は隣地所有者に崖崩れの発生について故意・過失があるとはいえないと思いますので,不法行為は成立しないと思います。
 ただし,「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(昭和44年7月1日法律第57号)という法律がありますので,隣地所有者がこの法律に違反していた場合には不法行為が成立する余地があるかも知れません。

 次に,土砂の撤去については,あなたは土地所有者として所有権に基づく妨害排除請求権を行使できますので,隣地所有者に対して土砂の撤去を請求することができます。

 最後に,崖崩れの防止工事ですが,多分,崖崩れの防止工事としては擁壁の設置を検討することとなると思いますが,これについては,判例(東京高等裁判所昭和51年4月28日第五民事部判決(東京高等裁判所昭和47年(ネ)第2570号,昭和47年(ネ)第2577号事件)が,「擁壁のごときは高地低地間の界標,囲障,しよう壁境界線上の工作物に近い性質をあわせ有することも考えると,民法第223条,第226条,第229条,第232条等の規定を類推し,相隣者が共同の費用(通常は平分と解する。)をもってこれを設置すべきものと解するのが相当である。」と判示しています。
 したがって,崖崩れの防止工事は,費用を折半して実施することを請求できることになるでしょう。    
 弁護士 田上尚志(平成25年08月28日,平成29年08月22日判例事件番号訂正))

 参考文献


 判例タイムズ340 172頁〜175頁(東京高等裁判所昭和51年4月28日第五民事部判決(東京高等裁判所昭和48年(ネ)第394号,450号事件))

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